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Night Has Settled 夜は封じ込められる

アメリカ映画 (2014)

スペンサー・リストが主演する13歳の少年オリバーの愛の遍歴。というと誤解が生じてしまうが、その愛の8割は、赤ん坊の時から一緒だったチリ人の乳母アイーダとの間に育まれた強い絆。それは、すべてを乳母に任せきりにして、料理すら全くしてこなかった存在感の薄い実の母親を遥かに凌駕し、オリバーにとって アイーダは母そのものだった。そのアイーダが、脳卒中で倒れ、オリバーは心配のあまり急性ストレス障害になってしまう。それまで、親しかったライラとはキスを交わす仲だったが、すべてどうでもよくなったオリバーは、無理難題を言って呆れさせる。同じクラスの悪友2人との関係は、アイーダの病状の悪化とともに危険水域を超え、オリバーは麻薬からセックスにまで足を踏み入れる。その間、オリバーは短い詩を少しずつ書き足してきた。その詩は、アイーダの死を受けて、オリバーを救おうとする母と姉の誠意が通じたことでようやく完成し、それによって心の区切りをつけたオリバーは、以前の状態に戻り、もう一度、人を愛することができるようになる。

13歳のオリバーは、シングルマザーで まだ若い母と 姉の3人で、ニューヨークの高級アパートに住んでいる。一家には、65歳になるペルー人の乳母アイーダがずっと一緒に住み込んでいて、家事のすべてをまかなっている。オリバーは、アイーダのことが母よりも大好きで、タバコを例にとっても、母の前では批判されても平気で吸うが、アイーダに対してはひた隠しに、バレた時には平謝りで、二度と吸わないと誓う。そんなアイーダが用事で数日間ペルーに帰国する。オリバーは、1冊のノートに詩を書き始める。1日に1行以下のペースで。ところで、オリバーには 前から付き合っていたライラという少女がいて、キスを交わす仲になっている。また、通っている私立男子校には、同じ年とは思えない同級生の悪ガキが2人いて、それに3人の女の子を加えた6人でいつもつるんでいる。そんな日常が崩れたのは、アイーダが戻って来た日。アイーダは真夜中にオリバーの部屋を訪れるが様子がおかしく、そのまま脳卒中で倒れる。オリバーは、気が気でないが、アイーダが入院した病院には行かせてもらえない。それがストレスを一層強め、ライラには変態的な話をして嫌われ、6人組の中ではオリバーに気のあるアナベルに迫られ動転する。そして、ようやくアイーダの病室に行けた時、それがアイーダの存命最後の瞬間だった。オリバーの心は砕け、酔っ払った勢いでセックスまでしてしまう。しかし、翌日、アイーダを嫌っていると思っていた姉が オリバー宛に書いたメッセージを読み、アイーダの葬儀に参列するために一人で乗ったチリ行きの飛行機の中で、母の助言に沿って詩の最後の一行を 前向きな内容で締めると、オリバーは本来の元気を取り戻す。

スペンサー・リスト(Spencer List)は、1998年4月6日生まれ。代表作は、このサイトの開設間もない頃に紹介し、やり直しが必要なほどの簡略版だった『Bringing Up Bobby(リセット)』(2011)と本作。リセットは2010年7月の撮影なので12歳。この映画は、2014年と3年後なので15歳と勘違いしそうだが、2014年2月のサンタ・バーバラ国際映画祭の監督インタビュー(https://www.youtube.com/watch?v=49-x_4sPLtg)の中で、2年前の撮影と言っているので、落葉の具合から2012年の11月頃の撮影。従って13歳となり、リセットとは1年しか違わない。甘えたり、抱き着いたりする時の表情はよく似ている。そしてしても、『リセット』もそうだったが、年上の女の人に “愛らしいおもちゃ” のように抱かれるのにぴったりの子役だ。現在でも映画に出演しているが、残念ながら脇役か端役。

あらすじ

映画の冒頭、“映画のラスト4分前のチリの首都サンティアゴにあるメトロポリタン大聖堂(Catedral Metropolitana)での象徴的な映像” が逆回しで挿入され、次いで、この映画の主人公、13歳になったばかりのオリバー(愛称オリー)と、その乳母 兼 家政婦のチリ人の65歳のアイーダとの “母子のような” 親密な関係が、少し淡い色彩で紹介される。1枚目の写真は、ちょうどスペンサー・リストのキャプションが入っている場面。主役なのになぜ “and” が付いているかと言えば、『Babel(バベル)』(2006)でアカデミー助演女優賞にノミネートされたメキシコを代表する女優の一人Adriana Barraza(アイーダ役)に敬意を表して、彼女の方をトップにあげ、“and” でスペンサーを上げている〔普通なら、スペンサーをトップにし、敬意を表する俳優は、主だった役の後に、“and” で表示するのが常識なのだが〕

映画の本編が始まる。1983年のニューヨーク。朝、アイーダが、オリバーの姉のアドリアナの部屋のドアをノックし、返事がないので次にオリバーの部屋に行き、ノックなしてドアを開けると、スペイン語で「ほら、ほら、起きて、起きて、目を覚まして」と言いながら、窓のスクリーンを上げ、オリバーの体を揺する。オリバーは、「おばあちゃんに殺される」と嬉しそうに喚く(1枚目の写真)。「起きるのよ、坊や」。オリバーは、「こっち、こっち」と両手を上げ、アイーダに 小型のバスケットボールを投げてもらうと、それを部屋の壁に付けられたゴールリングにシュート。見事 通ったので飛び跳ねる。アイーダは、「そのうちベッドが壊れるわ」と注意する(2枚目の写真)〔オリバーとアドリアナに対する接し方が全然違う〕。オリバーが便器に座っていると、すぐ脇のドアの向こうから、母が「カッコー」と呼ぶ。オリバーは、ドアを開け、便器に座っている母に、「やあ、ママ」と声をかける(3枚目の写真)。母は、「私たち、そっくり同じね。トイレに行くのも同時」と言い、オリバーが嬉しそうに笑う。オリバーがドアを閉めかけると、「トイレットペーパー、渡して」。「おなら顔さん、行くよ」。そう冗談で言うと、オリバーは、トイレットペーパーの先端を持って、母の方に転がす。紙ロールはわざと途中で止まり、母の手には届かない。オリバーは、「ちっちゃな可愛い手を伸ばせば届くのに」と言った後で、ロールをたぐり寄せ、母に向かって投げつける。母は、「この悪ガキ、ドアを閉めなさい」と半分本気で言い、オリバーは閉める時 中指を立てる。

この一家3人+アイーダの住むアパートの位置は、グーグル・マップの航空写真 中央の★印の位置(1枚目の写真)。高級住宅地アッパー・イースト・サイドのイースト72丁目155番地にある15階建ての煉瓦壁の建物で、セントラル・パークから3つ目の交差点を少し東に行ったところにある。グーグルのストリート・ビューで見ると(交差てから72丁目の東側方向)、2枚目の写真の矢印で挟まれた建物の5階。

学校に行くためアパートを出たオリバーは、建物の西隅に立って建物を仰ぎ見る(1枚目の写真)。きっと毎日同じだと思うが、アイーダが窓から顔を出し、手を振ってくれる(2枚目の写真)〔中央に映っている石の∧型の飾りは、3階の左から3番目の窓の上部に付いているので、アイーダのいるのは5階の左から5番目(建物の中央)の窓〕。それを見たオリバーは 微笑みを浮かべる。

オリバーは、途中で、クラスメイトで親友のヴァルが、建物の階段に座り、いつものようにイマジナリーフレンドの “テソロ” が、メトロにタギング〔公共の場に名前を描くこと〕している絵をスケッチブックに描いているのを見つける。「見てみな〔Check it out〕。どう思う?」。「いいね」(1枚目の写真)〔因みに、ヴァル役のEric Nelsenはスペンサーより7歳も年上。いくら何でも同級には見えない〕。そこに、もう一人の親友ニックがやって来て、「イマジナリーフレンドなんか最低だ」と言いながら、足でスケッチブックを蹴飛ばす〔ニック役のTommy Nelsonはスペンサーより5ヶ月年上なだけだが、声変わりしていてもっと年上に見える〕。ただ、3人は友達同士なので、お互いにじゃれ合い、ヴァルは、カンフーの真似をする(2枚目の写真)。学校の授業の場面では、教師が『オデュッセイア』を読んでいる〔39日目の場面〕。私語で注意されたのはニック。教師は途中で、そそくさと 「みんな、次は大虐殺だ〔オデュッセウスが求婚者全てを討ち殺し、屋敷の不忠の者たちを処刑〕」と授業を終えると、「バスケの練習に遅れてしまう。パースナン先生は5分で来られる。一度くらい いい子にしてろ」と言って出て行く。生徒全員が机を叩き始めると、オリバーは机の上に乗って叫び出し、もう一人の生徒Aが教師の机に立って叫ぶ。全員が机を動かし、その中でオリバーとAが取っ組み合う。すると、そこに次の教師が来るとの警報が入り、全員が必死で机を元に戻すが、間に合わない。怒った教師は 「誰がやった?!」と怒鳴り、オリバーが手を挙げる。それを見たニックは、特にひどいことはしていなかったが、仲間だから手を上げ、続いてヴァルも。一番派手にやっていたAは、ずるいことに黙っている。3人は校長室に連れて行かれる(3枚目の写真)。校長は、虫眼鏡を取り出して、凸レンズで3人の顔を逆さまにして見た後で、「君たちは私の蟻だ〔“I am a god, you are my ants” という言い方があるので、「ゴミみたいなもの」という意味合い〕」と言い、“もう、行け” とばかりに、手を振って出て行かせる。

学校からの帰り、3人は中国人の経営する小さな何でも屋に入り、ニックが、台に置いてあった箱の中からお菓子かサンドのようなものを盗み、それを見えないようにオリバーのバッグの中に落とす(1枚目の写真、矢印)。そこに、ニックのどうしようもないクソ兄貴が入ってきて、常識外のことをして店主に追い出される。その混乱に乗じて、ヴァルが、レジ台の下にあった黒い箱〔PLAYERとだけ書かれている。後の展開からするとタバコの箱のようだが、John PlayerというタバコはあってもPLAYERはない〕を、さっと盗む。そして、ニックは、yodelというお菓子を55セントで買って、万引き犯としてではなく、購買客として堂々と店を出て行く。次の場面では、3人がタバコを吸いながら舗道を歩いている(2枚目の写真、矢印はオリバーのタバコ)。すると、反対側からニックやヴァルの女友達3人組がやってくる(3枚目の写真)。

3プラス3の6人は、とあるアパートの玄関階段を占領してタバコを吸い合う(1枚目の写真)。女の子の1人が、「ヴァル、あんた、自分で自分の××しゃぶれるってホント?」と訊く。「ああ、俺のはデカいからな」。話はさらにHな内容となるが、日本で言えば中学1年生の男女間で1983年に交わされていたとは信じられない。これを聞いたニックは、「それって、こいつがゲイってことか? 自分の××を飲むなんてゲイに決まってる」。議論が交わされ、その間に ヴァルの一つ上段に座っていた金髪のアナベルは、ヴァルとキスするが、その目線はオリバーに向けられている(2・3枚目の写真)〔アナベル役のMarlee Robertsはスペンサーより6歳年上。大学1-2年生に相当するが、役どころはあくまで13歳〕。オリバーは、途中で話についていけなくなり、その場を離れる。

アパートに戻ったオリバーは、タバコの臭いを消すために洗面に行き、顔を洗い、口の中をきれいにする。そして、念入りにタオルで顔を拭く。そのあと、大好きなアイーダの部屋に行き、抱き着く。しかし、オリバーの大失敗は服を着替えなかったこと。アイーダは すぐに気付き、「タバコ吸った?」と訊く(1枚目の写真)。オリバーは、「ううん。友だちだよ。僕は吸わない」と嘘をつく。「あなたの友だち、気に入らないわね。あなたは、もう小さな子供じゃないの」と意見を述べた後で、「すぐ、チリに戻らないといけなくなった」と自分がいない間のオリバーが心配だと仄めかす。オリバーは、アイーダの頬を手で挟み、「心配しないで。タバコは吸わない。誓うよ」と、如何にも真面目に言う。「私のようなお婆さん、必要ないでしょ?」。「お婆さんなんかじゃない。僕の方が年上だ」。それを聞いたアイーダは、その冗談ににっこりし、「あなたが生後1週間の時、私はチリに戻るつもりだった。それから、ベビーベッドにいるあなたを見たら、あなたは私だけを見ていた」と、昔 チリに戻るのを止めた理由を明かす(2枚目の写真)。オリバーが、「チリなんかに戻らなくても」と将来のことを口にすると、アイーダは、「故郷で死にたいの」と言い出す。「ここが、あなたの家だよ。どこにも行かせない」。「私なんか もう必要ない。もう大きいんだから」。「なに言ってるの。僕がどのくらい愛してるのか知ってるの? ねえ、アイーダ、僕、ルナ〔オリバーの母〕より愛してるんだよ。あなたは、僕のお母さんだ」(3枚目の写真)。その言葉と同時に、アイーダはオリバーの頬を強く叩き、厳しい顔で、「二度と言わないで」と注意する。それは、乳母の分際で、実の母親の愛を奪ってしまったことに対する自責の念から出た行為で、そのことは、感動してそっと涙ぐむ様からも読み取れる。アイーダは、上着をはおると、「いい子でね、オリバー。日曜には戻るわ」と言い、アパートを出てチリに向かう。

オリバーが、どのくらいアイーダの部屋で一人考え込んでいたのかは分からないが、廊下に出て自分の部屋に向かうと、暗室で現像作業をしていた母が後ろから追って来て〔母は、写真家〕、ポリバットに入った “たくさんの頭蓋骨” の写真を見せ(1・2枚目の写真)、「どう思う?」と訊く。「頭蓋骨が暗すぎだね」〔この写真で見ると、母がかなり若いことが分かる。演じているPilar López de Ayalaは撮影時34歳。オリバーが13歳なので、20歳の時に妊娠した子供といったイメージ。オリバーの姉のアドリアナは、恐らく1歳違いなので、18-19歳の時の妊娠になる。シングルマザーだが、姉は時々父に電話をかけている。いつ別れたのかは不明〕。自分の部屋に行ったオリバーは、赤い表紙のノートの何も書いてないページに、この映画の題名と同じ言葉、「Night has settled」と書く(3枚目の写真)〔鉛筆を拳骨で握って書いている〕。この3文字を選んだのは、先ほど頭蓋骨をいっぱい見たからだろうか? それとも、短期間でも 大好きなアイーダがいなくなったからだろうか?

その時、玄関のチャイムの音が聞こえる。母は暗室なので、オリバーはノートを引き出しにしまうと、玄関ドアの覗き穴から誰が来たか見てみる。そこにいたのは、ガールフレンドのライラだった。オリバーは、ドアの外で、ライラに、「オリバー・ニコラスは運命の人。愛さずにはいられない」と言わせて、ようやく中に入れる。「ママはいるの?」。「ここには、ママなんかいないよ」(1枚目の写真)〔愛する “ママ” はチリに行ってしまった。戸籍上のママは現像室にいる〕。「今日は、て言いたかった」。「家にいないんだ」。2人はオリバーの部屋に行き、一緒にベッドに横になるとキスを交わす。口が離れた時、ライラは 「ブレース〔歯列矯正器〕を付けるのよ。それでも、キスしてくれる?」と訊く。「さあ、君次第」。「どういうこと?」。「化け物みたいに見えるかどうかだね」。そう言うと、またキス。「ブラ、寄こせよ」。「オリバー、ひどい人ね」。「そうさ」(2枚目の写真)。その時、急に声がかけられる。「あら、子鼠さんたち」。ライラは、すぐにベッドから降りると、ルナと向かい合い 「今日は、ニコラスさん」と挨拶し、キスをもらう。ルナは、さっきオリバーに見せた写真の再感光版を、「意見が聞きたいわ」とライラに見せる。「頭蓋骨ですね?」。「ええ、きれいでしょ」。反対はできないので、「多分そうですね」。一方、オリバーは、ベッドの反対側に降り(窓際)、ライターでタバコに火を点ける。それを見た母は、「何してるの?」と訊く。オリバーは 火の点いたタバコを指で差す。「いつから吸ってるの?」。「さあ、1年前かな」。「それって…」。「セクシー?」。「バカみたい」。「ありがと」。そのあと、オリバーは2人の間に割り込み、「ライラと僕はちょっといちゃつきたいんだ〔Lila and I are gonna fool around a little bit〕。出てってよ。チャオ」と母を追い出しにかかる〔13歳が こんな凄いこと、平気で言うとは…〕。ライラは、誤解を招くと困るので、「私たち、いちゃついてなんか…」と言い出し、オリバーは、「いつも してるじゃないか。君だって、嬉しがってる」。「でも、一塁までよ」。「大好きだろ?」(3枚目の写真)。「黙って」。ライラは、ルナに向かって 「一塁までです」と再度念を押す。オリバー:「二塁」〔一塁は、フレンチ・キスまで、二塁は、“Hands below the belt. Fingering for girls or hand jobs for the guys.” と書かれている〕。ライラ:「ちょっとは…」。

2人が、その後どう “いちゃついた” かは分からないが、その夜、オリバーは、興奮の余韻を買って自慰行為に励む(1枚目の写真)。すると、急にオリバーの顔が歪み、ひどい頭痛に思わず手で額を押さえる(2枚目の写真)。オリバーは、廊下で足音が聞こえたので、「ママ!」と呼ぶ。「どうしたの? 大丈夫?」。「僕、どこか悪いんだ」。「どこが? 話して」。「とても話せないよ」(3枚目の写真)。「何を話してもいいのよ」。「これはムリ」。「さあ、おっしゃい」。オリバーは、遂に話し始める。「オナニーしてると、オルガスムの直前に片頭痛が起きるんだ。ルービン先生に電話して、どこが悪いのか訊いてくれる?」。「医者に電話していいの?」。オリバーは頷く。電話で相談を受けた医者は、母の詳しい説明に対し、「歳は?」と訊き、「13歳になったばかりです」と母が言うと〔ここで、年齢が明らかになる〕、「深呼吸をするように伝えて下さい。そうした行為をするには、少し早過ぎますから」と答える。

暗室に母とオリバーが一緒にいる唯一のシーン。オリバーが 「この匂い、何?」と訊くと、母は 「アイーダが香水をくれたの。実験用のネズミはやめて、女性らしい匂いを始めた方がいいと考えたみたいね」と答える。オリバーは、さらに、「フランシスコとのデートはどんな?」と訊く。「普通よ。私、独身でしょ? 楽しんだっていい訳よね」。「どこまでいったの?」〔13歳の息子が母にする質問?〕。「関係ないでしょ。ヤな子ね」。「セックスしないの?」(1枚目の写真)。「まだ、好きかどうか分からないから。ちょっとキスするだけ」。「ホントに好きじゃない限り、ヤッちゃダメだよ」。「それって、私があなたに教えたことでしょ」。「違うよ、僕が教えたんだ」。部屋に戻ったオリバーは、ライラの写真を 写真立てに入れると、ベッドに横になって写真に見入る(2枚目の写真)〔先ほどの会話の続きなので、“次はどこまでやるか” でも考えている?〕。そのあと、小型のバスケットボールをゴールリングに入れようとしながら、「彼ならやれる」と何度も言うが、それもライラを意識しての発言か? 次にアドリアナの部屋に行き、姉が彼氏と電話しているのを見ると、お尻を振ってからかったり、ベッドの上で飛び跳ねたりして邪魔をする。オリバーが母の部屋の前を通り過ぎようとすると、「ちょっと、オリー」と呼ばれる〔ドアは開けっ放し〕。「あなたの最初の誕生日に書いたこと、聞きたくない?」。「いいよ」。「あなたの小さな体を胸に当てた時に感じたことは誰にも分からない」(3枚目の写真)〔映画では何の説明もないが、どうしてスペイン語なのだろう? 母は、チリからの移民で、だから乳母もチリ人なのだろうか? オリバーがスペイン語を話せるのも、母の母国語だから?〕。その時、姉が、居間のTVが壊れて映らないので、「『ラブ・ボート』〔1977-86年の超人気ドラマ〕見せて」と言って、母の部屋に入って来る。そして、2人を振り返って、「2人で、オナニーか死の話でもしてるの? キモいわね」と一言。

自分の部屋に戻ったオリバーは、窓を開け〔外は真っ暗〕、タバコに火を点けると、赤いノートを取り出し、3行目を書いている。「そこには、星々は存在せず」〔ニューヨークの街は夜でも明るくて星など見えない〕。その時、チリから帰ったアイーダが突然ドアを開ける(1枚目の写真、矢印はタバコ)。オリバーは、居間まで飛んで行くと、後ろから抱き着き、「ごめんね。もう吸わないから」と謝り、アイーダを180度ぐるりと回すと、「見てて」とタバコの箱を取り出し、残ったタバコ〔2本しか入っていない〕を取り出してバラバラにちぎる。そして、前から抱きしめて、「誓うよ。二度と吸わない。ごめんなさい、アイーダ」と詫びる(2枚目の写真)。アイーダは、ニコリともせず、黙ってオリバーの胸をポンポンと叩くと部屋を出て行く。アイーダが出て行くと、オリバーはちぎったタバコを拾い集める。母は、先ほどの会話を閉まったドアの向こうから聞いていたので、ドアを開けると、「ねえ、どうなってるの?」と尋ねる。「何でもないよ、ルナ。ほっといて。いい? 行ってよ」と、先ほどの対アイーダとは違い、すごくすげない。夜遅く、ルナは、アイーダの部屋に行き、「アイーダ、調子はどう?」と尋ねる。「元気ですよ、ニコラスさん」。「ニコラスさんて呼ばないでって、何度言えばいいの? ルナでしょ」。「役割をはっきりさせませんと」。「なぜ? あなたは家族の一員でしょ?」。「私は雇われの身ですから」。ルナは、部屋を出て行く時、少し前に廊下で聞いたことを取り上げる。「オリバーがあなたに依存し過ぎてるのは、無分別過ぎないかしら?」(3枚目の写真)。アイーダは、これに対して直接答えず、「喫煙は無分別過ぎます」と言い返す。

深夜、右手に1枚の写真を持ったアイーダが、オリバーの部屋に入ってきて、じっと立ち尽くす。気配で目が覚めたオリバーは、心配して 「どこか悪いの?」と尋ねる(1枚目の写真)。アイーダは、何も答えず、180度向きを変えると、部屋から出て行こうとするが、その時、手から写真が落ちる(2枚目の写真)。明らかに様子が変なので、オリバーはベッドから降りて様子を伺う。アイーダは よろよろと壁で体を支えながら廊下を歩いて行くと、居間の入口で倒れる。オリバーはすぐに走って行き、仰向けに倒れたアイーダに大声で呼びかける(3枚目の写真)〔このシーンは音楽だけで、音声は消されている〕。その声で、母が駆け付け、姉が救急車を呼ぶ。

翌朝、オリバーが 元気なく “学校に行く用意” をしていると、病院から戻って来た母が、「脳卒中だった。数週間、入院することになるけど、良くなるわ」と話す(1枚目の写真)。さらに、「病院に行っちゃダメよ。病院にいるところなんか 見られたくないんだって」と付け加える。学校に行ったオリバーの様子はいつもと全然違い、悲しそうな顔で、生徒達を避ける。そして、アイーダとの楽しかった交流を思い出して涙する(2枚目の写真)。学校が終わると、オリバーは途中で花屋に寄る。白いバラを見ていると、年配男性の店主はガールフレンドに贈る花束だと勘違いし、オリバーが 「白がいい」というのを無視し、勝手に赤いバラの花束を売りつける。オリバーには、誤解を解く元気もない。次に映るのは、オリバーのアパートの北400メートルにあるレノックス・ヒル〔Lennox Hill〕病院。オリバーは、花束を持ってアイーダの病室に向かう(3枚目の写真)。しかし、ドアのガラス小窓から覗くと母が付き添っていたので、花束を廊下の床に投げ捨てて走って逃げ去る。

オリバーが がっかりしてアパートの前まで帰ってくると、アパートの入口でライラが守衛と楽しそうに話し合っている。オリバーの姿を見つけたライラは、走っていって、「寒いわね、ホット・チョコレート飲みましょ」と、近くのカフェに一緒に入る(1枚目の写真)。いつもと様子が違うオリバーは、「僕が死んだら悲しい?」と尋ねる。「死なないわ」。「あまり悲しまないで欲しいな。ちょっとはいいけど」。ここで飲み物を注文。そのあとの話題は、がらりと変わる。「なぜ、僕たち まだセックスしてないのかな? 今夜、ヴァルのトコに来るといい。ヤクをやってから、セックスするんだ」。この、到底許容し難い話に、ライラは、「そんな気になれない」と拒絶。「その気になった時には、絶対何もしちゃいけない。その気になれない時に、何かが起きるのが人生なんだ」(2枚目の写真)「これは、人生のためのトレーニングだよ。訊きたいけど、時々セックスしたくなるんじゃない?」。この最後の言葉を、我慢の限界だと思ったライラは、黙って席を立つ(3枚目の写真)〔何度も書くが、これが13歳?〕

その日のヴァルのアパートでの怪しい会。しかし、オリバーは、どんな会か言わなかったかったので、母は、自分の階級の人々の夜のパーティに相応しい服装として、黒のスーツに蝶ネクタイをさせ オリバーを出て行かせる。しかし、彼らがまずやったのは、夜の静まり返ったメトリポリタン美術館前の大階段に固まって座り、“サンパー” というゲームになぞらえてはしゃぎ、ビールを飲み、語ること(1枚目の写真)。女の子の一人が、いきなり、「この中で、処女じゃないの私だけだと思う」と言い出す。すると、アナベルも 「私もそうよ」と言う。ヴァル:「まさか」。「今年の夏、失ったの」〔紅葉しているので、今は秋〕。オリバーは、アイーダのことが心配で、そこに座っているだけ。このあと、オリバーを除く5人は、美術館の大階段下の噴水池の横で、酔っ払って踊る。一行はヴァルのアパートに移動し、居間で2つのクループに分かれる。ヴァルはアナベル、ニックとオリバーは、他の2人の女の子。ヴァルは自作の詩を詠んで聞かせ、ニックはおもちゃの日本刀を手に、残りの3人を前に忍者の真似。オリバーは2人の女の子に挟まれ、ドラッグを紙で巻いたもの(?)を吸った女の子が(2枚目の写真)、オリバーにキスして煙をオリバーの口の中に吹き込む。隣の女の子も同時にオリバーの頬にキスする。キス責めに遭っているオリバーの前で、ニックは忍者の真似を続けるが、誰も見ていない。そのうち、ニックは、室内に流れていた音楽の音量を異常に大きくして、詩を詠んでいるヴァルの邪魔をする。アナベルは、ニックの嫌味な態度を呆れて見ている(3枚目の写真)〔このシーンでは分からないが、ヴァルの背後上部には、俵屋宗達の風神雷神図が飾ってある〕

そのうちに、ニックが1人の女の子とソファで上半身裸になって一緒に寝る〔女性は服を着ている〕。居所のなくなったオリバーが廊下に逃げていると、そこにアナベルが寄って来て、「ここで、何してるの?」と訊く。そして、すぐ横のキッチンに連れ込み、顔をぴったり寄せ、オリバーの左手を掴むと、顔のところまで持って行き、指を口に入れて吸うように何度も舐め、思わせぶりに 「どんな感じがすると思う?」と言いながら(1枚目の写真)、手をオリバーのズボンの中に入れようとする。その時、ビールを取りに来たヴァルが2人の関係をぶち壊し、「やあ、ベイビー」と言ってアナベルにキスする。オリバーは、そんなヴァルを、ある意味、恨めし気に見ているし(2枚目の写真)、アナベルは、キスされながら、目線はオリバーを向いている(3枚目の写真)。この2人の構図は、最初の頃のアパートの前の階段でのシーンと似ているが、その時のオリバーはアナベルの目線に気付いていなかった。オリバーは、後で、アナベルはオリバーに気があり、ヴァルなんかどうでもいいんだと、別の女の子から教えられる。

性的興奮に耐えられなくなったオリバーは、すぐ横のバスルームに行くと、シャンプーを手につけると、ドアをバックに立ったままオナニーを始める(1枚目の写真)。しかし、前と同じように、突然 オリバーの顔が苦痛に歪む〔オルガスムの直前の片頭痛〕。オリバーは、そのまま床にずり落ちて行くが、ドアの向こうで、「オリバー、どこに行きやがった?」という声が聞こえたので、慌てて降ろしたズボンを上げて立ち上がる。オリバーが間に合ったところでニックが入って来て、「デイジーと三塁まで行ったぞ」と自慢する。「あいつ、すごくエロいんだ。すげえ体験だった」。そこにヴァルが入ってきて、ニックの自慢はさらにエスカレート。「デイジーの三塁は、××ガブ飲みだ」〔三塁は、“When mouths are used below the belt. Essentially going down on a guy or girl.” と書かれている〕。そこに、ヴァルの兄が割り込んできて、「黙ってコカ〔yoyo〕を盗みやがったな」とヴァルを責め(2枚目の写真)、罰として、ヴァルを浴槽に入れて 上から小便をかける。オリバーは、思わず顔を背ける(3枚目の写真)。

深夜、アパートに戻ったオリバーが、複雑な気持ちを紛らわそうと 無音にしたラジオのスイッチを点けたり消したりしていると、廊下で思いきりドアをバタンと閉める音が聞こえる。その直後、母が 「何てこと、アドリアナ! 分別のない! 真夜中にドアをバタンと閉めるなんて!」と叱る声がする。アドリアナは 「せっかく眠ったトコなのに! クソッタレ! なんで私をそんなに嫌うの?! 私が何したっての? ほっといて!」と怒鳴り返す。オリバーが正装のYシャツも脱がずにベッドに倒れ込んでウトウトしていると、姉が夜食の皿を持って入って来ると、「オリバー」と呼びかける(1枚目の写真)。そして、「パパと一緒に暮らすわ。ママはどうかしてる」と言い出す。「そんなのできない」。「そう? 見ててごらん。いつか ぎゃふんと言わせてやる」(2枚目の写真)。「ベッドに戻りなよ。朝にはイライラも治ってるさ」。「ううん、もう遅過ぎ。私は出てく。あんたも注意なさい。さもないと、ああなって終わりよ」。翌朝、病院に行ったルナは、アイーダの腕を優しくさすっている(3枚目の写真)。「心配しないで。ちゃんと食べさせているから。私にだって料理くらいできる」。「いいえ、あなたにはできません」。アイーダは、オリバーのことが気がかりで、「オリバーはどうしてます? 元気ですか? オリバーは、まだ小さな子供です。自分では、そう思ってなくても」と訊く。オリバーがアイーダを “母” と慕っていることに若干のやきもちを妬いているルナは 「今は そんなこと心配しないで。早く良くなって戻って来てもらわないと。私たち、あなたが必要なの。オリバーもね」と言う。ルナの嫉妬に気付いているアイーダは 「私には オリバーの母親代わりになる気など全くありません。私は母親ではありません。あなたが母親です」とはっきり言う。それに対し、ルナは 「あなたは、私たち全員の母親よ」と優しく応え、その言葉にアイーダの顔が綻ぶ。

オリバーと母が カフェにいる(母はコーヒー、オリバーはケーキ)。オリバーは、「授業参観日にレザーパンツを履いてくるなんて信じられない」と、母を批判する(1枚目の写真)。それに対し、母は、「クールなママを持ったことを、幸せだったと思う日がきっとくる。あなたは、銀行家なんかで終わって欲しくないの。それに、他の親の前で “ジョーン・ジェット〔ロック・ミュージシャン〕” なんて呼んで欲しくないわ。不愉快よ」と反論。ここで、母は話題を変え、「アイーダに会いに行ったわ。最近、具合がよくないの」と話す。それを聞いたオリバーは、いきなり立ち上がり、手で喉を押さえて 「窒息しちゃう」と言う。「しないわ。座って」。「真面目だよ。そんなことが よく言えるね」。「あなたは健康なの。だから、落ち着いて」。「僕が窒息しかけてるのに、そんなこと言うなんて信じられない」(2枚目の写真)。「窒息なんかしてない。醜態を演じてるだけ」。「そっちこそ、醜態を演じてる。僕は窒息してる。医者に行かないと」。母はすぐオリバーを医者に連れて行く。医者は、オリバーの喉を見るが 異常は何もない(3枚目の写真)。オリバーは、つかえていたものがなくなったと弁解するが、アイーダの死が近づいたことを知ったショック症状だったことは明白。

その夜、母は、調理に挑戦する。といっても、ほうれん草入りのマッシュドポテト(?)の既製品を温めて皿に入れただけ(1枚目の写真)。あとは、冷凍食品のムニエルにレタスのサラダ。アドリアナが嫌々席につくと、母は、「さあ、私の料理を食べましょうね」と、スペイン語で言う〔アイーダの代わりになったつもり?〕。電話がかかってくるが、母はなかなか取ろうとせず、「最高のレストランもびっくり」と自慢。ようやく、電話を取りに席を立つ。アドリアナは、母がいなくなると、「こんなの食べるとホントに思ってるのかな」と冷たく言う(2枚目の写真)。母は、戻ってくると、アドリアナに父から電話だと教える。アドリアナは、嬉しそうに席を立つ。アドリアナは、父に 「もうできない。ママやオリバーと一緒に暮らすなんて無理。パパは、ママやオリバーと毎日暮らしてないから分からないでしょうけど… 私、パパと一緒に暮らせない?」とすがるように頼む。「アドリアナ、もっと現実的にならないと。私は、仕事のために旅から旅の毎日だ。今は日本にいる。ママと仲良く暮らすすべを見つけないと。是非ともな。もう、子供じゃないんだから」。この、ある意味 当たり前の言葉に、アドリアナは泣き崩れる(3枚目の写真)。その夜、医者から電話がかかってきて、オリバーを精神科医に診せるよう勧めるが、母は、息子のことは自分が一番よく知っていると言い、申し出を断固拒否する。

翌日、オリバーが学校に行っていない間に、母は、オリバーの机の中にあった赤いノートを取り出し 眺めている(1枚目の写真)。そこに書かれていた内容は、少し増えて、「夜は封じ込められる、デスマスクの中に。そこには、星々は存在せず、王子たちは首を吊られる」になっている(2枚目の写真)。それを読んだ母は、左のページに何事か書き込む(3枚目の写真)〔内容は、後で分かる〕

学校での 授業が始まる前に起きたニックのヴァルに対する悪質な “口撃”。逐語訳に相応しくない内容なので、大雑把に説明すると、最初は、①昨夜のヴァルのアパートで、ヴァルの兄がすべてをブチ壊しにしたことへの文句に始まり(1枚目の写真)、②それに対するヴァルの “ニックの三塁” に対する相手女性への痛烈な批判、③それに対する報復としてのヴァルのイマジナリーフレンド、テソロに対する侮辱(2枚目の写真)〔イナジナリーフレンドを持っている=ホモ〕。この辺りから、生徒全員がまた机を叩き始める。すると、急にヴァルの表情が変わる。オリバーが心配して 「どうしたの、ヴァル?」と訊くと、「テソロが消えた」と衝撃を受けた返事〔それまでヴァルには見えていたテソロが、見えなくなってしまった〕。心ないニックは、ヴァルにとっての一大事にもかかわらず、「からかってんのか? バカじゃないのか? そんな奴、もともと存在しないんだぞ」と畳みかける。ヴァルは、頭に来て 「いなくなっちまった! お前、いったい何なんだ〔What's wrong with you〕?!」と怒鳴ると、その場を立ち去る。それを見た、前にもバカをやった生徒Aが喜んで踊り出す。オリバーは、怒り心頭になると、生徒Aの胸ぐらを掴んで黒板に押し付ける(3枚目の写真)。その時教師が入って来たので、オリバーは教室を出て行く。

オリバーがアパートの前まで来ると、ライラが待っていて 笑顔を見せる。歯には、ブレースが付けられている。「まだ、キスしたい?」(1枚目の写真)。しかし、それどころではないオリバーは、「行くところがあるんだ」と、真面目な顔で言う。「一緒に行っても?」。首を僅かに横に振る。「まさか、アナベルが好きになったの?」。「アナベル? ヴァルの彼女だよ」。「あなたが好きなのよ。あなたに近づくためにヴァルを利用してるって 聞いたわ」。「そんなじゃないんだ」(2枚目の写真)。「どうしたのよ、オリバー。話して。お願い」。「行かないと。ごめんね」。最後の「ごめんね」で、嫌われていないことが分かったライラは、オリバーにキスする。オリバーが向かった先は、もちろん病院。しかし、病室のドアまで行くと、小窓から看護婦が唇に指を当てる(3枚目の写真)。そして、ドアを半分開けた看護婦は、「ずっと眠ってるの。明日、もう一度来てみたら」と教えてくれる。オリバーは、窓越しに心配そうにアイーダを見つめ続ける。

がっかりしてアパートに戻ったオリバーは、アイーダの部屋に行ってみる(1枚目の写真)。洗面台に行き、アイーダが母に渡したヘア・スプレーに匂いを嗅いでみる。次のシーンで、オリバーと母は一緒に教会に行く。後方の席に着くと、母が 「アイーダのためにロウソクに火を点ける?」と訊くが、オリバーは首を横に振る(2枚目の写真)。代わりに、席に置いてあった聖書の裏表紙の裏の左側の白紙のページに、鉛筆で 「アイーダに死んで欲しくない」と書いて 母に見せる。母は、本と鉛筆を受け取ると、その下に、「あなたを愛してるし、慰めてあげられるといいんだけど、私たちはみんないつかは死ぬのよ」と書く。オリバーは、その下に、「アイーダに死んで欲しくない、すぐには!」と、最初の文を母のコメントに応えて修正・加筆する(3枚目の写真)。母は、オリバーの手を握り締める。

場面が がらりと変わり、ゲーム機の置いてあるカフェで、オリバーがプレーし、両脇にニックとデイジーがいる。一方、テーブルにはヴァルとアナベルが座っている(1枚目の写真)。アナベルは、ヴァルに、「もう、あなたが好きじゃなくなった」と はっきり言う。「俺のガールフレンド、やめたいって?」。アナベルは首を横に振る。一方、ゲーム機からはニックがいなくなり、残ったデイジーは、「アナベルは、あんたに首っ丈。今、ヴァルと別れてるトコ」と教える。振られたヴァルが店から出て行くと、ニックが後を追う。デイジーはゲーム機から離れ、替わりにアナベルがゲーム機に行く。そして、「金曜の夜、パーティをやるの。来ない?」と誘う(2枚目の写真)。オリバーは返事すらしない。「オリバー? ヴァルと別れたわ」。それでも返事がないので、いきなりキスする。オリバーも、ゲームをしていた手を放し、アナベルを抱いてキスする(3枚目の写真)。しかし、ニックが戻って来て邪魔をすると、オリバーは、アイーダへの心配を忘れようと、ゲームにのめり込む。

翌日、オリバーは、白いバラの花束を持って病院を訪れる。オリバーが、病室に入って、花束を脇テーブルに置くと、その音でアイーダが目を開く。オリバーは、ベッドに上半身を置くと、アイーダを抱き締める(1枚目の写真)〔結果的には、「アイーダに抱き締められる」、と言った方が正確かも〕。アイーダは、「来て欲しくなかった。男性は、なぜ女性の言うことを聞かないの?」と訊く。オリバーは、「気分はどう?」と心配そうに尋ねる。「生きてるわ。アドリアナは?」。「あなたが、大好きだよ。僕たちみんな。前より、若くなったね」。この最後の言葉で、アイーダが笑顔になる。「子供みたい」。「そうかもね」と言って笑う。オリバーは、「あなたが小さかった時、どんなだったの?」と尋ねる。「生まれた時から年寄りだった」。「今までに、恋したことは?」。「その質問は、一体何なの? 今までに、恋したかって? 考えさせて」。「僕と同じくらい あなたのことを愛した人、いる?」。「ずっと昔、私には、あなたみたいな坊やがいた」(2枚目の写真)「私が、生涯で一番愛した人よ。今、あなたを愛してるように。でも、12の時に死んでしまった。今まで写真を見せたことなかった?」。「ううん。アパートに戻ったら、写真見せてよ」。「いいわ」。「アイーダ、あなたは一人じゃないよ。僕が、この世の何よりも、あなたを愛してるから… 何よりもね」。アイーダは嬉しそうに頷き、オリバーは もう一度抱き着く。看護助手が食事のトレイを持って入って来るが、その姿を見て、邪魔しないようトレイをそっと置く。「愛しい坊や、泣かないで」(3枚目の写真、左目に涙)。

看護助手が出て行くのと同時に、アイーダの様子は急変する。「カナダには行きたくない。緑は好きな色じゃない」。と無意味なことを口走る。オリバー:「カナダ? 何なの?」。「飛行機には一度しか乗ったことがない。私はチリにいた。私と私の母さん。私は、どこにも行きたくない」(1枚目の写真)。オリバーは、アイーダの容体の急変が心配で、泣き出す。すると、「なぜ、泣いてるの、ルイス? 私の可愛いルイス、泣かないで」と、意識の中で過去と現在が混乱する。この後、どのなったのか、映画では明示されない。次のシーンでは、学校の授業中、オリバーは、ずっと虚ろな表情のまま、心ここにあらずの状態でいる(2枚目の写真)。学校の廊下を歩いていたオリバーは、掃除道具部屋に逃れるように入ると、アイーダが入院の前に落とした写真を取り出して見る(3枚目の写真、矢印)。裏には、「ルイス、1960、サンティアゴ」と書かれている。アイーダの愛した夭逝した我が子だ。

オリバーが再度病室を訪れると、遺体は撤去され、ベッドはきれいにされていた(1枚目の写真)。オリバーは、ベッドに腰かけ、魂が抜けたような表情でじっと座り続ける(2枚目の写真)。そのうち、ルイスの写真を電話機にもたせかけて置くと、今度は、ベッドに横になってじっと見入る(3枚目の写真、矢印は写真)。

夜になってオリバーが戻ってきて、アイーダの部屋を開けると(1枚目の写真)、心配して待っていた母が両手を拡げて迎える。「ここに座って」。オリバーが母の隣に座ると、「いらっしゃい」と手を体に回し、自分を抱かせる(2枚目に写真)〔オリバーが自主的に母を抱いているわけではない〕。そこに、アドリアナが帰宅し、「誰かいる?」と声をかける。そして、「私の化粧品、どこにいったか知らない?」と捜し回り、「くそ、どこにもない。遅れちゃう」とブツブツ文句を言い、アイーダの部屋で抱き合っている2人を見て、「わあ、どうしちゃったの、気持ち悪い」と言ったものだから、これまで内に秘められて行き場のなかった悲しみが、“途方もない怒り” に変わり、オリバーは 姉を壁に押し付け、首を絞める(3枚目の写真)。母は必死に引き離すと、オリバーは思い切りバタンとドアを閉め、アパートを出て行く。

オリバーは、中国人の何でも屋にずかずかと入って行くと、飲料の冷蔵ケースを開け、半ダース入りのビールの箱を手に取ると(1枚目の写真、矢印)、お金も払わず、そのまま出て行く。オリバーは、街角でビールのラッパ飲みを始める(2枚目の写真)。そして、金曜パーティが行われているアナベルのアパートに入って行く(3枚目の写真)。

オリバーを見つけたアナベルは、すぐに自分の部屋に連れて行き、キスしたままベッドに倒れ込む。熱烈なキスが続いた後、アナベルは上半身裸になってベッドに入り、シーツを被る。オリバーもパンツだけになって(1枚目の写真)、アナベルの横に入ると、先ほどのキスの続き。長いキスの後、顔を離したアナベルは、「あなたのこと愛してる。私、処女よ。あなたが欲しい」と言い(3枚目の写真)、熱烈にキスする。

カメラは、それ以上のシーンは写さず、朝となり、オリバーは眠っているアナベルを起こさないように服を着て、アナベルに体に毛布を被せる(1枚目の写真)。オリバーがドアを開けた音で目が覚めたアナベルは、オリバーに笑顔を見せる(2枚目の写真)。オリバーの照れくさそうな顔に、僅かに笑顔が混じる(3枚目の写真)。

朝、アドリアナがオリバーの部屋をノックすると、夜、出て行ったきり、戻っていないことが分かる。そこで、自分がレポート用紙に夜中に書いたことを、ベッドに横になって読み直してみる。一方、オリバーは、アナベルの家を出ると、フェンスを乗り越えてセントラル・パークに入り、自分のアパート目指して走って行く(1枚目の写真)。アパートに入り、自分の部屋に行くと、待ちくたびれた姉が眠っている(2枚目の写真)。オリバーは、ベッドの上に置いてあったレポートを読んでみる。タイトルは、「アイーダの好きなトコ」。内容は、①気の利いた助言をしてくれる、②青い便箋でチリへの手紙をタイプする、③ひどいことをしても決して叱らない、④スペインのメロドラマが好き、⑤ヘア・スプレーと緑の石鹸の匂いがいい、⑥エプロンと服に染み一つない、⑦美容院に毎月予約する、⑧チキン・ヌードルスープが美味しい、⑨誕生日とクリスマスに靴下をプレゼントしてくれる(3枚目の写真)。

オリバーは、チリで行われるアイーダの葬儀に、1人で向かう。母が呼んでくれたタクシーに乗ったオリバーに、姉が、「ホントに一緒に行かなくていいの?」と訊くと、母が代わりに答える。「オリバーは一人で行きたいの」。オリバーは、「ありがとう、ママ」と 笑顔を見せる。そして、母は航空券を渡す(1枚目の写真)。展開は非常に早い。飛行機が離陸すると、オリバーは赤いノートを開く。そこに書かれた文書は、何度も重複するが、「夜は封じ込められる、デスマスクの中に。そこには、星々は存在せず、王子たちは首を吊られる。誰も傷つきはしない」。最後の1行だけ増えている。ここで、初めて母の書き込みが映る。「オリバー、詩を終わらせて、ルナ」。オリバーは、最近の出来事を総合して、最後の1行を書き加える(2枚目の写真)。その1行は、「愛し過ぎたことで」(3枚目の写真)。これで、「愛し過ぎたことで 誰も傷つきはしない」という、アイーダや母や姉に相応しい文章が完成した。

飛行機はチリの首都サンティアゴの上空に差しかかる。窓から見えた街並みが1枚目の写真。参考までに、少しだけ広い範囲のグーグル・マップの航空写真が2枚目の写真。オリバーが向かった先は、チリ・カトリックの総本山メトロポリタン大聖堂(3枚目の写真)。

祭壇のロウソクの映像(1枚目の写真)は、美しかったので採用したが、なぜ、彫像や壁の絵が 写真の下3分の1の部分に反射して映っているのか分からない。全く台詞がないので、状況は推測するしかないが、アイーダの親族はかなり大勢いる、みなが一斉にオリバーに注目する(2枚目の写真)。オリバーは前に進み出ると、遺体の胸の部分に、アイーダに捧げた赤いノートと、アイーダが愛したルイスの写真を置く(3枚目の写真)。

映画のラスト。ニューヨークに戻ったオリバーは、映画の冒頭と同じ場所に立って、昔、アイーダが手を振ってくれた窓を見ている(1枚目の写真)。すると、そこに、「何 見てるの?」と、ライラが後ろから近づき、並んで見上げる(2枚目の写真)。「行くわよ」。「うん、行こう」。2人は仲良く手をつないでデートに出かける(3枚目の写真)〔めでたしめでたしだが、アナベルが可哀想な気も…〕

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